メルセ祭 Castelleras
2009年 09月 30日
カタルーニャ州の各市町村では、この時期、フィエスタ・マヨール「Fiesta Major」(大祭り)と呼ばれる
町をあげての祭りが各地で行われます。
バルセロナ市のフィエスタ・マヨールはその守護聖人、「メルセの日」(9月24日)を
メインとして約1週間続きます。
この時期、旧市街地を中心に地元市民や観光客が街に押し寄せます。
イベントが盛りだくさんで、老若男女、誰もが楽しむことができます。
主要な広場に設置されるステージでのライブ音楽や各種屋台はもちろん、
カタルーニャ地方の伝統ダンス、「サルデーニャ」、
巨大人形のパレード、などなど。
そして、最も有名で、独特なものが、カタルーニャの伝統行事、「Castellers」(人間の城)。
今回は、このCastellerasについて、書いてみます。
メイン行事(というか大会?)は、9月24日昼12時30分、サン・ジャウメ広場で開催されました。
バルセロナの各地域を代表するグループが技と高さを競い合います。
このCastellers、まるで日本のお祭りのように、各町毎にクラブがあり
(例えば「チーム・サグラダ・ファミリア」、「チーム・バルセロナ・カテドラル」など)、
いろいろな町のフェスタ・マヨールの大会に出場して競争をしているそうです。
「人間の城」には難易度によって点数があり、チームごとに、その点数を競いあいます。
中でも、TV局の中継が入り、最も世の中の人の注目を集める、
バルセロナのフィエスタ・マヨールでの大会は、最高の舞台でしょう。
当代きってのよりすぐられた5チームがいよいよ入場行進。
決まってこの形。2段目に屈強な男性。3段目に女性、そして4段目には子供。
不思議な催しものと言ったらそれまでなのですが、
実際に生で実物を見てみると、これが感動的なのです。
見物している観衆も傍観者でいるわけにはいきません。
人間の塔が作られていくに従って緊張感が漂い、まるで、
観衆の視線や願いによって塔が安定し、皆が人間の塔に参加しているような気分になります。
上部にばかり注目が集まりがちですが、「柱」になっている人の周囲には、
塔全体や補強のためにメンバーを支える集団がいます。
「力」「バランス」「勇気」。
下部から順番に男性→女性→子供と続いていき、特にてっぺんの「casteller(塔の一段)」となり、
人の柱をよじ登っていくのは、メンバー中、もっとも体重の軽い、最年少の子供が努めます。
登りきってポーズを決めた後に、また柱を構成している人々の背中を滑り降りなければならず、
子供ながらに、難易度の高い技術と、そして勇気を示さなければなりません。
このCastellerがポーズを決めた後も気が抜けません。
塔を築き上げたメンバーの一段が「降りてくる」際のバランス維持が、また大変なのです。
全員が降り終わると、観衆はこらえていた息をつくことができ、拍手と歓声が響き渡ります。
成功に喜ぶメンバーの姿に、感動で涙が出そうになります。
まるで、個人の功績など存在せず、自分の安全は他者の手中にあり、
自身の手には他者の安全が託されていることを知っている
男たち、女たち、そして子どもたちに対して敬意を表する儀式のようです。
力と、そして物理的、精神的なバランスが共有された時に、人間の塔は築き上げられます。
美しいものは常に複数からなり、失敗や成功も決して孤独なものではない。
この不思議な伝統行事には、そんなカタルーニャ精神がつまっているのかもしれません。
by bonito_seco | 2009-09-30 06:33 | バルセロナの話